ヨーロッパ・ポルトガルの健康でエシカルなライフスタイル

筆者は、昨年の夏からポルトガルの首都・リスボンで1年間限定で暮らしています。ポルトガルでは、ヴィーガン製品やオーガニック製品が広く普及しており、衣服を再利用する習慣も人々に定着しています。現地で生活する中で、ポルトガルでは健康で環境負荷の少ないライフスタイルを実践しやすい国だという発見がありました。今回の記事では、食品・日用品をテーマにポルトガルでのエシカルライフスタイルについて紹介します。


ポルトガルのヴィーガン製品

(出典:O-DAN

ポルトガルの首都リスボンは、健康でクルエルティフリーなライフスタイルへの注目が近年加速度的に高まっている都市の一つです。*HappyCowのデータによると、リスボン市内では、ヴィーガンレストランが37件、ヴィーガンビジネスが74件、ヴィーガンフレンドリービジネスが525件存在しているとのことです。この実績から、リスボンは2024年の最もヴィーガンフレンドリーな都市Top10にランクインしています。

Lisbon top 10 for vegans - The Portugal News

*HappyCow:ヴィーガンやベジタリアン向けの情報を集めたプラットフォーム・コミュニティサイト


ヴィーガンの食品・外食

(ポルトガルのスーパーマーケットにあるヴィーガン食品コーナー)


実際に、ポルトガルのスーパーマーケットではヴィーガン食品を気軽に購入することが可能です。大型のスーパーマーケットに限らず、街中にある小規模のスーパーマーケットでもプラントベースのミルクや代替肉が購入できます。

大豆ミートは、調理用のものからソーセージ、ハンバーグなどの加工品も売られています。レストランでも、必ずと言って良いほどヴィーガンメニューがあります。種類が豊富で味も美味しいので、私は日本にいる時よりもヴィーガンの食事をすることが圧倒的に増えました。また、ヴィーガンの友人と外食する際にも選択肢がたくさんあるのも嬉しいです。


ヴィーガン・クルエルティフリーの日用品

(リスボンにある日用品店 “Normal”の店内の様子)


私の住んでいるリスボンには、 “Normal”という日用品店があります。Normalはデンマーク発祥で、北欧を中心にポルトガルにも店舗があり、バラエティ豊富な商品ラインナップでリスボン市民に人気です。ここでは、ヴィーガン認証マークやクルエルティフリー認証マークのついた石鹸や化粧品が多く販売されています。私もトラベル用のシャンプー・コンディショナー、洗顔料、保湿クリームなどヴィーガン、クルエルティフリーのものを購入しました。また、スーパーマーケットの日用品コーナーにも、ヴィーガン認証マークのついた商品が置かれています。


(洗顔料やシャンプーのパッケージにはヴィーガン認証マーク、クルエルティフリー認証マークが付いている)


ヴィーガン製品がなぜエシカルなのか

牛やひつじといった家畜から出るげっぷやおならには、メタンガスが含まれており、メタンの温室効果は、CO2の約25倍と言われています。畜産業では非常に多くの水を使用しますが、ヴィーガン製品は比較的水の使用が少ないという側面もあります。また、家畜の飼育には広大な土地が必要ですが、家畜の生産量に合わせて森林伐採が行われることもあり、問題となっています。

直近の研究では、1日に100g以上の肉を摂取する食事と比較して、ヴィーガンの食事は温室効果ガスの排出・水質汚染・土地利用を約75%削減できるということが明らかになりました。また、生態系の破壊は66%削減、水の利用も54%削減できるということです。ヴィーガン製品やクルエルティフリー製品を個人が少しずつ日常生活に取り入れることで、持続可能な未来を形成していくことが可能になります。


参考:代替肉とは? 注目の理由やメリット、具体的事例、今後の展望を解説:朝日新聞SDGs ACTION!

Vegan diet massively cuts environmental damage, study shows | Food | The Guardian.



ポルトガルのオーガニック(BIO)製品

(出典:The organic logo - European Commission


欧州ではオーガニック食品のオーガニック製品の市場が大きく、スーパーマーケットではオーガニック食品の特設コーナーがあるほどです。オーガニック製品の目印は、写真のようなBIOマークです。BIO製品として認定されるためには、EU全体や各国で定められた規定をクリアしなければいけません。例えば、化学合成の肥料や農薬が使われていないこと、遺伝子組み換えが行われていないこと、合成添加物の使用が制限されていることといった規定です。他にも、家畜の飼育環境や餌の種類に関する規定もあります。BIO認証マークが付いている商品は、生産・加工・流通の全工程でこの規定に適合している必要があります。

ポルトガルのスーパーマーケットにもBIOマークがついた製品は必ず置かれています。こちらでできたヨーロッパの友達も好んで、意識的にBIO製品を選んでいる印象です。


参考:EUオーガニック認証とは マークの意味・基準と対象商品をわかりやすく解説

欧州における有機食品規制調査

 

BIO製品を選択して、環境にも動物にも人間にも優しく

(ポルトガルのスーパーマーケットのBIOコーナー)


生産から流通までの過程で化学肥料や農薬を使用しないということは、土壌や水質の汚染を軽減することに繋がります。農薬や添加物、遺伝子組み換えによる健康被害のリスクを低減できるというのも、BIO製品を選択することのメリットです。また、自然に近い飼育環境で、適切な飼料を与え、動物のストレスを軽減する取り組みは、動物の福祉に貢献しています。BIO製品の市場が大きいポルトガルやヨーロッパ諸国では、環境・人・動物に優しい選択肢が日本よりも身近にあると感じました。



まとめ

ポルトガルで生活してみて、日本でももっと手軽にヴィーガン商品やBIO商品を購入できるようになれば、一人ひとりがエシカル消費を実践しやすくなるのではないかと考えるようになりました。今回取り上げた日用品や食品以外にも、衣服のリサイクルについてもポルトガルでは盛んに行われているので、また別の機会にご紹介する予定です。




筆者プロフィール:Saku

1995年岡山県生まれ。奈良女子大学文学部卒業。フリーライター。

ポルトガルのカラフルでかわいい街並みと、インクルーシブで緑豊かな公園に恋し、2023年6月から首都リスボンで生活している。